第1回医学・生命科学セミナー
若手研究者による発表
今回のセミナーでは、若手研究者の研究力向上やとキャリア形成を支援、及び研究ユニットの活動の更なる促進を図るため、若手研究者6名による発表を行いました。
- 「レプチンは好酸球の走化性を促進する事で、好酸球性副鼻腔炎を増悪させる」
園田 紬岐(耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 – 免疫・アレルギ – 研究ユニット) - 「自然免疫システムによる腫瘍細胞の排除とその破綻によるがん進展」
深田 靖人(血管統御学 – 生体制御学ユニット) - 「嗅覚障害をきたしたアレルギー性鼻炎モデルマウスの鼻腔の組織学的検証」
前川 文子(脳形態機能学(解剖学2)) - 「新生児食物蛋白誘発胃腸症の診断における便中バイオマーカーに関する研究」
野村 詠史(小児科学) - 「日本脳炎ウイルス感染症を制御するアンジオクラインシステムの解明」
Lamri Lynda(血管統御学) - 「血清中 N 結合型糖鎖プロファイルに基づく乾癬の新規バイオマーカー探索」
西村 健太郎(皮膚科学)






招待講演
免疫・アレルギー疾患を対象とした遺伝学研究の第一人者である東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター分子遺伝学研究部教授の玉利先生を招聘し、「気管支喘息および慢性鼻副鼻腔炎の病態解明」と題する講演を実施しました。

「気管支喘息および慢性鼻副鼻腔炎の病態解明」
演者:玉利 真由美(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター 分子遺伝学研究部 教授)
<概要>
気管支喘息および鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎(CRS w NP)は遺伝要因と環境要因が複雑に関与して発症する疾患であり、それらの一部は好酸球性慢性炎症である。中には、従来の治療に抵抗性を示す難治性例も存在し、その病態解明は喫緊の課題である。ゲノムワイド関連解析(GWAS)は遺伝要因から病態解明を行うものであり、これまでに多くの喘息および CRS w NP を含む喘息関連疾患 GWAS が行われ、疾患関連領域およびその近傍には生物学的製剤を含む治療標的となり得る遺伝子が多数存在することが示されてきた。近年、CRS w NP の中でも 2 型炎症が強い症例(2 型エンドタイプ)や、アスピリン喘息(AERD)合併例が、難治性で多いことが明らかとなり、これらに対して生物学的製剤が有効であることが示されている。近年、臨床所見に基づくフェノタイプ分類に加え、病態生理・分子メカニズムに基づくエンドタイプ分類が注目されており、治療反応性との関連から個別化医療(precision medicine)を進めるうえで不可欠と考えられている。
網羅的な病態解析技術の進歩に伴い、bulk RNA-seq や single cell RNA-seq による CRS のエンドタイプの同定が進み、CRSwNP に特徴的な遺伝子発現プロファイルも明らかになりつつある。特に dupilumab は 2 型エンドタイプに有効であり、難治性 CRS w NP に対する重要な治療選択肢となっている。また、鼻粘膜擦過細胞による低侵襲なトランスクリプトーム解析は、外来でのエンドタイプ推定に有用で、臨床応用が期待される。
本講演では、最近の気管支喘息および CRS w NP 関連 GWAS の結果、好酸球性鼻副鼻腔炎におけるエンドタイプ解析、さらには CRS w NP に対する生物学的製剤の効果に関する最近知見について概説する。
総括
本セミナーは、福井大学における高度医療人材養成拠点形成事業の一環として、アレルギー・免疫・感染症といった相互に関連する研究分野について、最新の研究成果を共有し、分野を越えた議論を深めることを目的として開催されました。これらの分野は、感染症への対応や免疫の仕組みを活用した新たな治療法の開発など、現代医療においてますます重要性が高まっています。
当日は、若手研究者による発表が行われ、多様なアプローチに基づく研究成果が紹介されました。
基礎研究の成果を将来的な診断や治療につなげることを目指した取り組みも多く見られ、研究の広がりと将来性が感じられる内容となりました。
また、招待講演では第一線で活躍する研究者により、当該分野の最新動向や今後の展望についてわかりやすく紹介され、参加者にとって今後の研究を考える上で大変有意義な機会となりました。
本セミナーは、高度医療人材の育成という観点からも重要な役割を果たすものであり、分野間の連携の重要性を改めて認識するとともに、次世代を担う若手研究者の育成および今後の研究のさらなる発展につながることが期待されます。
最後に、本セミナーの開催にあたり、関係各位のご支援とご協力を賜りましたことに、厚く御礼申し上げます。また、ご多忙の中ご発表・ご参加くださった皆様に、心より感謝申し上げます。来年度も開催を目標に頑張って参りますのでご支援の程よろしくお願いします。今後は、基礎と臨床をつなぐセミナーとしてさらに発展させられるよう、尽力してまいります。

